第153回タスクフォース21
2022.10月例会

講演録

無償配管・無償貸与問題について

講師:経済産業省 資源エネルギー庁 石油流通課 課長 永井 岳彦

動画ダイジェスト版

はじめに

 資源エネルギー庁石油流通課長しております永井と申します。本日は、LPガスに関わる問題についてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、皆さんはよくご存知のことかと思いますけれども、LPガス産業とはどういったものか。それから、LPガスは何よりも災害に強いということで、経済産業省としてどのように支援をさせていただいているか。そして、ちょっと問題のある商慣行だと思っております無料配管・無償貸与問題について、いまどういうことを考えているか、そうしたところをご説明したいと考えています。

LPガス産業の現況

国内需要の推移と見通し

 まず、LPガス産業の現況です。国内の需要につきましては、なんといっても地方ではLPガスが主要なエネルギーになっていますので、全体の半分くらいが家庭用に使われています。それから、4分の1くらいが工業用で、ほか化学工業の原料にも使われています。

 2000年には年間1,800トンを超えていましたが、最近はやはり省エネ、さらには電化への動きもあるということで、1,400トンくらいのところで推移をしています。ただ、この先の需要につきましては、ほぼほぼ横ばいでいくのではないかというのが我々の見立てです。

我が国のLPガス輸入

 そして、我が国はどこからLPガスを輸入しているかというところです。いまロシアのウクライナ侵略の関係もありまして、エネルギー需給が非常に大きな問題になっておりますが、幸いLPガスにつきましては、2015年くらいからのシェールガス、シェールオイルの商用化を踏まえ、大部分が米国産になっております。そのほかも、カナダ、豪州という地政学的に非常に安定的なところから入ってきています。

 また、世界を見ましても、ロシア産のLPガスが世界需給に占める割合は3%程度で、石油、天然ガスと違って、比較的に安定的な燃料となっています。

世界のLPガスの供給見通し

 今後どうなるかですが、LPガスは石油の随伴ガスとして出てきているところが大部分です。このため、石油の生産が減少していくのにつれてLPガスも減少していくのではないかという見立てがあります。すると、脱石油へと早く動けば、LPガスも一気に下がっていく。

 その一方で、需要につきましては中国、インドといった、………本文の続きを読む>>>

「無償配管・無償貸与問題について」に係る意見交換

講師:経済産業省 資源エネルギー庁 石油流通課 課長 永井 岳彦

動画ダイジェスト版

 永井課長の講演後、質疑応答を兼ねた意見交換を行いました。聞き手はエネルギー事業コンサルタントでタスクフォース21 顧問の角田憲司氏が務め、質問はオンライン参加の聴講者や会場参加者から募集し、永井課長よりご回答いただきました。

角田氏: 最初にいただいているのは、戸建てと集合の、どちらの解決が先になるのでしょうかという質問です。
 この質問の意図は、先般の朝日新聞の報道をきっかけに、5月から6月にかけ、戸建ての商慣行における裁判事例を分析する懇談会があったことを受けて、戸建ての商慣行に問題があり、液石法14条も棄損させる可能性があるという問題提起が懇談会でされたというように受け取られているのではないかと推測します。
 ただし、全国的にそうした係争問題があるわけではないので、多くの地方圏の人たちは「どういうこと?」という感じを受けています。一方、弁護士出席の懇談会では、もともとあった賃貸集合住宅はどうするのかという期待されていた部分の問題について、あまり焦点が当たらなかった。このため、どちらの方向を向いて、どうするのかという感じになっています。
 すなわち、商慣行問題ははっきり2種類あるという認識に石油流通課さんもおそらく立たれたと思うのですが、消費者保護の観点から、どちらの問題の解決を優先されるのか、あるいは共に解決をしていくのか、制度改正も含めてお考えになっているのか。そのあたりを伺いたいという意味だと思いますので、よろしくお願いします。

永井氏: これはどちらも重要な問題だと思っておりまして、先ほどの説明では賃貸住宅の方をあえて先に説明し、その後に戸建ての無償配管の話をするという構成になっていたと思います。
 そもそも、弁護士事務所に判例分析をお願いするときには、LPガスの商慣行にかかる判例を集めてほしいというお願いでしたので、無償配管と無償貸与を区別するつもりはなかったのです。
 ただ、100件ぐらい集めてフタを開けてみたら、無償配管の判例がたまたま多かった。賃貸のほうは、裁判にするくらいだったら、もうさっさと撤去してしまうというようなことで、あえて裁判までやっている事例が少なかったのです。
 その結果、調査がまとまってきたタイミングでお話を聞こうとセッティングしていたところ、そちらが主になってしまったということがあります。
 ただし、賃貸の問題も大きいと思っておりまして、昨年の6月に料金の提示を要請しました。何よりも、入居者さんに事前に知ってもらった上で選んでもらう。それが何よりも重要です。
 これもある種考え方で、ガス料金は確かに高いけれども、このアパートはいろいろな設備が新しくて、その割には賃料が安い、とトータルで考えたらそれでもいいよねという割り切りもなきにしもあらずではないか。
 やはり消費者に選択を与える。そして、高いものはやっぱり市場から出て行く。こういうようなことが基本だと思っておりますので、この料金提示の周知を徹底すること、これはすぐにでもできる話なので、しっかりやっていきます。
 その上で、戸建住宅にも関係する、ある種LPガス事業者を競わせることによっていろいろなものを提供させるという商慣行、これを変えていくことが大きな問題かなと思っております。

角田氏: それに関連していただいている質問は、戸建ての無償配管というか、私たちは無償配管ではなく貸付配管だと思っていますが、その貸付配管の弊害をなくすために、実際にどんなことを考えておられるのでしょうか、という内容です。
 ご講演資料を見ると、賃貸集合については不動産業界団体との協力要請で進みつつあるというイメージですが、戸建てに関しては、まだ問題が提起されて事実が明らかになっただけだと思います。2回目の懇談会でLPガス事業者である澤田社長などから改善策が提案………本文の続きを読む>>>

『ガスとお湯の50年』からガス事業者の今後を考える

講師:『ガスとお湯の50年』編集委員会 委員長 神﨑 茂治

動画ダイジェスト版

はじめに

 ご紹介いただきました神﨑です。本日のテーマである『ガスとお湯の50年』の編集委員会の委員長を務めた関係で、概要と活用方法についてご案内申し上げます。

 今回、タスクフォース21事務局からいただいたテーマは「ガス事業者の今後を考える」という大変大きなもので、我々がこれに対して十分に対応できるのかという心配はございますが、期待にそえるよう工夫をしながらお話させていただきます。

 私がまず感じたのは「これからの住まいと暮らし」「地域社会でのお湯の提案」の2つです。前者については、発行した冊子でかなり深堀りしていますから、ご参考になるのではないでしょうか。そして今日の聴講者で一番多いだろうLPガス事業者の皆様にとって、後者はかなり大きなテーマであろうと思います。これについては、一部分は触れてまいりますが、今回の『ガスとお湯の50年』ではそこまで深堀りできていないことを、最初にお断りさせていただきます。

 またタスクフォース21例会の過去の講演を見させていただくと、非常に専門的なことを深堀りされていらっしゃいます。今回、我々は3回のシリーズでのご紹介をしますが、かなり領域を絞っておりますから、皆様もさまざまな反応があるのではないでしょうか。そのあたりのご感想も聞かせていただければと思います。

 今回は、3回シリーズの第1回目として、『ガスとお湯の50年』のプロジェクトの目的や概要をご案内します。そして、そのプロジェクトにおいて発刊した2つの冊子とその活用方法についてご紹介いたします。一方で、エネルギー関連事業者の課題についても、お節介ながらお話したいと思っています。

プロジェクト『ガスとお湯の50年』の概要

プロジェクトの2つの目的

 今回のこのプロジェクトには、大きく2つの目的がありました。1つ目は、歴史を知る、残すということ。ガスというと幅広いのですが、そのなかであえてお湯に絞り、50年を振り返りました。2つ目としては、この50年は単なる昔話ではなく、暮らしを変えてきたものであり、それを踏まえてこれからを考えるという視点があります。

 (一財)ベターリビングでは、ガスとお湯の歴史を、ガス機器の技術というだけでなく、住生活の観点からも読み込んでいくことにしました。そして、今後のさらなる住生活の充実と、将来の機器の開発の在り方についても、プロジェクトのテーマとしています。

 昔話を残すということだけでなく、これからを考える。冊子を発刊して終わりではなく、それに関連してさまざまな事業を継続して進めていくということが、プロジェクトの目的になります。

 冊子の発行にあたって、ベターリビングが主体となり、企画委員会と編集委員会を設けました。企画委員会の委員長については早稲田大学の教授で国土交通省の住宅関連の座長等を務めていらっしゃる田辺新一先生、そして編集委員会の委員長は、私・神﨑が務めさせていただきました。約7,000部の冊子をつくりましたが、皆様に幅広くご利用いただきたいと思います。

 発刊したスケジュールについては令和4年と書いていますが、実はもっと早くできている予定でした。しかしコロナの問題もあり、なかなかスケジュールどおりにはいきませんでした。

冊子を「使ってもらう」ために

 このプロジェクトは冊子をつくることではなく、使っていただくことが目的です。  冊子『ガスとお湯の50年』を発刊し、さらに小冊子『暮らしを変えたガスとお湯の物語』を発刊したことも重要ですが、それ以外にも各地で開催されるイベントに出展したり、本日のような研修会の準備も進めています。今後、皆様自身が講師になって使用できるような研修用のテキストを作成し、………本文の続きを読む>>>