エネルギー業界ニュース

省令改正関連情報

改正省令セミナー開催報告②

プロパン新聞2025年8月18日号掲載

自主適合宣言と法的解釈を議論

 改正省令の施行により、LPガス業界では自主適合宣言を行った事業者が競争上不利な状況に追い込まれるという深刻な問題が浮上している。タスクフォース21が開催した特別例会では、正直者がバカを見る現状への対応策や、消費者契約法との兼ね合いなど、業界が直面する法的課題について活発な議論が交わされた。今号では、自主適合宣言をめぐる課題と法的解釈の問題を中心に報告する。

過大な営業行為と自主適合宣言の課題
正直者がバカを見ないために

 意見交換会の冒頭は、タスクフォース21会員からの情報提供により明らかになった「自主適合宣言を行った事業者が競争上不利な状況に追い込まれている」実態についての報告と、過大な営業行為と自主適合宣言をめぐる課題について検討された。
 論点となったのは、自主適合宣言企業の競争上の不利な状況、地域格差の問題、通報制度の機能不全、行政対応のばらつきなどである。  対応策として、無償貸与の過大性判断基準の明確化、宣言率向上に向けた重点的な周知、通報制度の改善、行政指導事例の業界内共有などが提起された。登壇者からは、法解釈の曖昧性と行政対応のばらつきが現場の混乱を招いているとして、統一的な基準策定と指導の必要性について述べられた。
 登壇者、会場参加者の主な発言は以下の通り。

指導や立ち入り経験の情報共有が必要 ― 中川氏

 中川氏は、事前に寄せられた質疑やプロパン新聞の記事を紹介した。現在も無償配管と給湯器の無償提供を条件とする営業が続いており、そうした事業者が顧客を獲得しているとの情報があることを伝えた。さらに、プロパン新聞で報じられた「大家と守秘義務契約を結ぶ営業事例」なども紹介した。
 対応策として、無償貸与の過大性判断基準を行政に求め、全国統一の指導を行う必要があると述べた。また、指導や立ち入り経験は、業界団体も含めてきちんと共有していく必要があると述べ、業界全体での情報共有の重要性について述べた。

適正営業で新規契約激減の実態 ― 会場参加者

 会場参加者からも実際の被害状況が報告された。改正省令の趣旨に則って適正な営業を行っているが、その結果、新規契約が全く取れなくなったという。競合会社は引き続き利益供与で新規獲得を積極的に行っている。一方、自社は契約が全くゼロに近い状況だと述べた。改正省令を遵守する事業者が市場から排除される現象が起きているとの報告があった。

無償貸与や営業行為の範囲を考える ― 松山氏

 無償配管、無償貸与について、松山氏は前提として「私は法律的に考えて、無償貸与は正常な商慣習の範囲であり、過大な利益供与には当たらないと考えている」と述べた上で、「法解釈が確定していない現状では、自主適合宣言で一切無償貸与はしない、フリーメンテナンスもやらないと宣言した人たちがバカを見る状況になりかねない」と述べた。
 法的解釈については、無償貸与は正常な商慣習の範囲であり、過大な利益供与には当たらないとの見解を示しつつ、「すでに法は施行されている。無償貸与が過大な利益供与なのか、それに当たらないかどうかの解釈を確定しなければならない」と、明確な基準の必要性について述べた。
 また、過大な営業行為の範囲についても、商行為として過大か正常かの考え方の見解を示した。今、業界一般で過大な営業行為と考えられている「ボンベ置き場使用料」について「ボンベ置き場の使用料を取ることは、問題はない。ボンベを置くために場所が必要で、そこを借りるということは、これは正当な商取引である。使用料を払うということは問題ない」とした上で、「問題はその金額。あまり高額な金額を取ると、それはオーナーに対して過大な利益を供与しているということになる」とした。
 置き場使用料の算出方法として、福岡地裁判決を引用して「福岡地裁の令和4年の判決がある。ボンベを置いている人に対する明け渡し請求で、付近の駐車場の料金を参考にして1カ月数千円であった」と紹介し、「これはあくまでも不法占拠による賠償金なので、契約の場合はもう少し高くてもよいと思う。それでもせいぜい1万円や3万円である。広さにもよるが、それに応じて考えていくということが必要だと思う」と、実務的な料金水準を示した。
 「ソファーを貸し出すときに場所代を取らないのだから、ボンベ置き場の使用料支払いはおかしいという議論があるようだが、それは違うと思う。ソファーはモノを貸すだけで、置き場所を借りるわけではない。これに対して、ボンベ置き場は入居者等がガスを使うためのボンベをアパート所有者の土地に置かせてもらうので、置き場を借りる。使用料を払うのは正当な商行為」と説明した。

協会のリーダーシップが結果に出る ― 境野氏

 境野氏は、自主適合宣言企業が標的にされている現状について「取り組み宣言を出したところが狙い撃ちされているならば、今回の改正省令の意味がなくなる」と述べた。
 自主適合宣言率の地域格差について、沖縄県と大分県は自主適合宣言率が100%、秋田、沖縄は70%と高い水準にある一方で、宣言企業が1社、2社、3社という極端に低い地域も存在しているとの実態を再確認。宣言率が高い地域の要因について、大分県については全国LPガス協会の山田耕司会長のお膝元で、会長の強いリーダーシップがあったことを挙げ、秋田、沖縄については協会専務理事らの意欲が高い宣言率につながっていると分析した。 一方で、低い地域は大手の事業者でも三部料金制に移行していないケースもあると指摘。地域のリーダーの強いリーダーシップや意欲が高い宣言率の要因であるとの見方を示した。

「契約書を見る」と熱心な行政官も ― 会場参加者

 行政の対応に対する不満や不信が多く語られる中で、参加者からの発言で、実態の把握に熱心な行政担当者の例も紹介された。自主取り組み宣言に反する営業を行っている業者の事例を県の担当課長に伝えたところ、「そういう事例があったら、その会社に行って契約書を確認すると言ってくれた」と、行政の対応に期待し信頼を置く発言もあった。

通報制度は「空き家のポスト」状態 ― 角田氏

 一方で、「実際に対応しているのだろうか」と指摘がある通報フォームについて角田氏は、制度の機能不全について指摘した。通報制度には料金苦情や過大な営業行為が混在し、整理できずに機能していない様子を「毎日のように通報が届くが、空き家のポストのように溜まったまま仕分けもできていない状況ではないだろうか」と紹介。対応策として、通報内容を分類・精査し、過大な営業行為に迅速対応できる仕組みに改めることの必要性について述べた。

大手企業の無償貸与停止は重い ― 中田氏

 中田氏はワーキング参加の大手企業が取引不動産会社や建築会社に対して集合住宅における新規取引についての条件見直し交渉を行っていることを報告。「経営トップが現在は設備の無償貸与、メンテナンス、サービス等の物品提供は一切行っていないという宣言は重い」とし、それを評価した。

改正省令の解釈と消費者契約法
自主適合宣言の流れを維持すべき

 すでに施行された改正省令についての法的解釈の曖昧さと実務対応の課題について、さらに意見交換が続けられた。消費者契約法の適用、説明義務の重要性、既存契約の脆弱性、消費設備の範囲をめぐる解釈問題などが論点。理論武装した大手企業による新たな切替営業の可能性への懸念も示された。

理論武装した大手企業の動向注視 ― 中川氏

 中川氏は配管や給湯器の無償貸与はこの業界特有の商慣行だとして改正省令により禁止となったが、異業種でもと同様のサービスは行われていることではないかと指摘。それを踏まえ「無償貸与等が法律違反ではないと理論武装し主張する事業者が現れた場合は厄介だ」と懸念を表明した。
 「行政に対してしっかりと見解をちゃんと明らかにしてもらうということを言い続けるしかない」と、継続的な働きかけの必要性を述べた。

消費者契約法の説明義務を詳述 ― 松山氏

 松山氏は消費者契約法の適用について詳細な解説を行った。「消費者契約法の4条では、重要な事実については事実と異なった説明をすると契約を取り消すことができる」と述べ、法的義務としての説明責任を説明した。
 説明すべき具体的内容について、「消費者に設備料金を負担させる場合には、どんな設備なのかという具体的な内容、その価格はいくらなのか、そして、それをなぜ消費者が負担するのか。設備というのはこの建物に設置するわけだから、本来はオーナーが負担することであって、家賃から回収するというのが普通である。それをなぜ消費者が負担するのかというそこまでの説明が必要だろう」とした。なお、消費者契約法では、消費者に不利な契約条項は丁寧に説明しても無効となる可能性があるので、本来、家主が負担すべき設備費用を消費者に負担させるには、消費者に対する説明だけでなく、その理由を契約書に書いておくという工夫も必要であると述べた。
 さらに「今までの既存契約はそこが不徹底。そうすると消費者契約法第10条を持ち出されて、過大な負担になっているから無効だと争われる可能性がある」と述べた。
 対策として、「契約書の中に書いてチェックを入れる。これを説明したということで説明したのは、何月何日誰が説明したということを書いておくということが必要である」と、具体的な記録方法を提案した。

消費者保護最優先に対する対応を ― 境野氏

 境野氏は消費者への説明における現実的な課題を指摘した。消費者契約法について、「圧倒的に消費者を守るための法律。契約書に小さく書かれているだけで、消費者が確実に理解しているとは言えないような状況であればその情報は無効となる」と述べ、事業者側の説明責任の重さを指摘した。「しかし、だからといって、説明の様子を録音しなければいけないのかとなれば、それも疑問だ」とし、消費者の理解度や説明の確認方法に課題があり、仕組みの改善や工夫が必要だと指摘した。

戸建て契約の説明方法に言及 ― 角田氏

 角田氏は戸建ての新規契約に関する課題を述べた。戸建て住宅での貸付配管について、新規の戸建ての契約では消費者への説明や消費者契約法との関係でどのように行うべきかを考える必要があると指摘した。
「普通の一般消費者に非常に馴染みや理解がある仕組みだった貸付配管制度とは異なり、設備料金として今回3部料金制という仕組みで説明を懇切丁寧にして理解を得ねばならない」との見解を示した。

改正省令セミナー開催報告①

プロパン新聞2025年8月11日号掲載

改正省令セミナー

 プロパン新聞とタスクフォース21は7月25日、「改正省令セミナー」(タスクフォース21第169回特別例会)を開催した(既報)。セミナーでは「業界新秩序の構築へ~改正省令本格施行後の問題点と今後の課題」をテーマに、5人のパネリストが改正省令の影響や運用現場の実態について意見を交わした。当日は同会会員のほか、本紙読者企業からの参加も含め、約70名が聴講。今号から3回連載でセミナーでの議論を掲載する。

改正省令の影響を多角的に検証 ― 矢部事務局長

改正省令の影響を多角的に検証  タスクフォース21はガス体エネルギー関連企業の業態や系列を超えた研究団体。エネルギー業界の現在の課題解決や新たな事業展開の検討するための例会(講演会)を隔月で実施、サイトや情報誌により情報を発信している。現在の運営は一般社団法人タスクフォース21が行い、出版・企画会社であるノラ・コミュニケーションズと本紙が後援している。
 セミナー冒頭で開催趣旨を説明したタスクフォース21の矢部元法事務局長は、改正省令完全施行後も販売現場で解釈や対応にばらつきが見られ、法令順守に対する事業者間の温度差も各地で発生していることを指摘。改正の目的として掲げられた「商慣行の是正」が業界をどう変えようとしているのか、そのビジョンと現場との間にあるギャップを確認し、LPガス業界がどう向き合い、何に取り組むべきかを明らかにする必要があるとした。
 特に、改正がめざす料金の透明化は消費者から歓迎される一方で、事業者にとっては付加価値営業や多様なエネルギーサービスの展開を妨げる要因になるのではないかという懸念を提起。さらに料金競争が激化し、大手企業への集約化が進んだ場合、地域のインフラを支えてきた中小事業者の存続が危ぶまれる恐れもあることを問題視した。
 セミナーでは改正省令が与える影響を多角的に検証し、制度・運用面での見直しや補足説明が行政に求められる場合には、その具体的な提言についても検討するとした。現場の声を集約し、消費者と事業者の双方にとって持続可能で健全な業界の方向性を模索する場として、建設的な意見交換を行うことが目的であることを改めて参加者に伝えた。

改正省令を機に新秩序構築へ ― 中川講師

改正省令を機に新秩序構築へ  最初に登壇したタスクフォース21事務局の中川順一講師(ノラ・コミュニケーションズ社長)は、改正省令施行を機に新時代に対応した業態変革の研究強化を打ち出した。行政動向の把握と情報発信は継続するものの、行政が何かしてくれるのを待っていたり、行政の判断が出るのを待つのではなく、業界の自立的な対応姿勢の重要性を強調した。
 中川氏はタスクフォース21のスタートが1997年の液石法大改正への対応であったことを説明、当時の経験を振り返り、「新しい交付書面を配布せよと言われたが、具体的な内容は行政から出てこない。今回の省令改正と同じ。だから自分たちでまず作り、行政と業界に問いかけた。今回もそういう活動が大切」と述べ、業界の主体的な取り組みの必要性を訴えた。
 改正省令への対応では、過大営業行為や設備料金の具体的基準が不明確なことに懸念を表明。「具体的に何がダメで、何がいいのということは明らかにしないと困る」とし、行政に対する継続的な働きかけの重要性を指摘した。その理由として、規制の拡大解釈により新事業創出が阻害される可能性を危惧し、「LPガス事業者が現状のガス顧客との関係の中で試みる新しい事業が阻害されたらいけない」と述べた。
 業界の将来展望については、「LPガス事業者が持っているノウハウ、インフラ、お客様との接点、それらを活かして新しい事業を作っていかないと」と述べ、既存の強みを活かした事業多角化の必要性を強調した。
 市場が縮小する中で「顧客が半分になった時に、24時間体制を12時間にしていいわけではない。なくなった12時間分、どんな仕事を入れるか。顧客客を増やすことができなかったら、何かやらないといけない」と、新たな収益源確保の緊急性を訴えた。また、料金競争激化で収益源となれば、「最後の砦は維持できない」と語った。
 今後のタスクフォース21の活動方針として、業界枠を超えた発想の重要性についても言及し、「大事なのはガスを残すことじゃなくて、会社を残すことですから。会社を残すためには何をすべきなのか」と述べ、事業存続を最優先とする考えを示した。

問題解決へ自ら働きかけることが大切 ― 境野講師

改正省令を機に新秩序構築へ  コネクトエネルギーCEOの境野春彦氏は、8年にわたる改革の経緯と今後の展望について詳しく解説した。
 まず、2017年6月のガイドライン発出から始まった改革の流れを「序破急三部作」として整理。特に2021年12月の朝日新聞一面記事「LPガス設備費上乗せ」を転機として挙げ、「この報道から事態が急激に動き始めた」と振り返った。
 改正の核心となる三部料金制について境野氏は「目的はたった一つ、無償貸与の炙り出し」と断言。賃貸集合住宅での無償設備提供という商慣行により、消費者に不透明な料金負担が生じている実態を指摘した。
 特に注目されたのは、なかなか動かない国土交通省への政治的働きかけの経緯だ。境野氏は橘川武郎氏の示唆を受け、参議院議員の河野義博氏(当時)に協力を要請。「私のような一個人の働きかけで国を動かすことができた。皆様方の力を合わせればもっと大きなリーディングができる」と業界が結束して動くことを呼びかけた。
 さらに講演では大手事業者の投資実態やこれまでの営業手法、切り替え業者の逮捕事例や週刊東洋経済の特集などを挙げ、「やり方に問題があるプレイヤーが徐々に追い込まれている」と商慣行是正のこれまでの流れを評価。通報データの地域分析では特定地域で情報提供と強引な勧誘行為が重複しており、「どこの誰が何をやっているか非常に鮮明に見える」と指摘した。
 最後に商慣行是正の取り組みの成功事例として、無償貸与を完全廃止したある事業者の事例を紹介。同社社長は「法改正により悪い商慣行はやめる。正しい商売の道に協力してくれ」と内外に伝えた。方針転換により、顧客数は減少したものの「社員が胸を張って仕事できるようになった」との効果を報告。大手ハウスメーカーからも「順法精神の高いガス会社との取引を拡大したい」との評価を得ているという。
 境野氏は「消費者に信頼され生き残る唯一の手段は法令遵守の徹底」と強調し、「働きかければ答えは出る。皆様と一緒に業界をより良く変えていきたい」と締めくくった。

無償貸与は違反行為と言えるか疑問 ― 松山講師

無償貸与は違反行為と言えるか疑問  松山・野尻法律事松山・野尻法律事務所の松山正一弁護士は、改正省令の法的解釈について講演した。改正省令の趣旨には理解を示しつつも、『無償貸与を違反行為と捉えるのは法解釈として難しい』との見解を示し、行政の解釈に疑問を投げかけた(詳細は資料参照)。
 改正省令で導入された三部料金制により、新たなリスクが生じていると報告。今年4月にガス会社に届いた消費者からのクレーム文書を紹介(本紙既報)し、「一般消費者が書くとは思えない内容で、他のガス会社による新たな切り替え手口の可能性がある」と分析した。
 紹介料については「全面禁止は法解釈上妥当ではない」との立場から、不動産業界の仲介手数料上限(3%)を参考に、年間ガス料金の3%程度を目安とする基準設定を提案した。
 講演の締めくくりで松山氏は、「行政には数字や具体例を用いて明確な基準を示すことが必要だ」として、より詳細なガイドライン策定を求めた。

【参考】省令の解釈論(松山講師の当日の配布資料から)

1. 無償貸与は、正常な商慣習を超えた利益供与(過大な利益供与)に当たらない。

  1. 無償貸与は、過大な利益供与に当たるということが当然のようになっています。しかし、ガス会社とオーナーとの設備の無償貸与契約自体は、単なる設備の使用貸借(民法593条)に過ぎません。無償貸与によって、オーナーは設備費用を負担せず、消費者に設備費用を転嫁しているから違反行為に当たると言われていますが、無償貸与契約の中には、消費者に設備費用を負担させるという契約条項はありません。消費者の設備費用の負担は、消費者とガス会社のガス契約における取り決めですから、これをオーナーとの設備契約の評価に持ち込むことはできないと考えます。使用貸借自体は、民法で認められた典型契約であり、世の中で設備の無償貸与はいくらでも行われていますから、それ自体を過大な利益供与とすることはできないと考えます。三部料金制の施行によって、消費者が設備費用を負担していることが分かった場合に、ガス契約の見直し(消費者契約法4条、10条など)を通じて、ガス会社とオーナーとの無償貸与契約の見直しをするかどうかの問題であると考えます。
     要は、ガス事業者とオーナーとの無償貸与契約は、過大な利益供与には当たらず、三部料金制で明らかになった設備料金の内容次第で無償貸与契約の見直しをするかどうかです。
     無償貸与は過大な利益供与に当たるという前提自体が、改正省令の解釈論としては難しいと考えます。
  2. メンテナンスフリーについても、同じことが言えるうえに、ガス供給開始後の約定の場合は、契約締結目的(15の3、4)を欠く点でも、違反行為と言えないと考えます。
  3. さらに進んで、そもそも設備契約は無償貸与契約とはいえないのではないかとも考えられます。
     ガス会社とオーナーとの設備契約は、これまで無償貸与であることが当然の前提になっていました。しかし、無償貸与すなわち使用貸借(民法593条)は、借主が貸主から目的物の引き渡しを受けて無償で使用収益する契約ですが、ガス設備契約において、オーナ-は自分の所有物件にガス会社がガス設備を設置することを承諾するだけで、オーナー自身がその設備を使用してガスの収益事業をするのではありません。したがって、設備契約は使用貸借ではなく、単なる設備の設置契約に過ぎないと考えます。そうすると、オーナーとガス会社の設備契約が、正常な商慣習を超える利益供与に当たると考えることは、なおのこと難しいと考えます。

2. 紹介料について

 紹介料が一切いけないとすると、紹介料自体が、「正常な商慣習を超えた利益供与」ということになりますが、現実の商取引において、ある程度の金品の授受は商慣行として行われているのは周知の事実です。LPガスの取引においてだけ、金品の授受が一切「正常な商慣習を超えた利益供与」であるというのは、解釈論として無理ではないかと考えます。パブリックコメントでも、「社会生活において、正常な商慣習の範囲内の利益供与は広く一般的に行われており、ガス事業者による利益供与も法令上「一切」禁止するものではない」と述べています(令和6年4月5日パブコメ・P・28・№29④)。
 現在、紹介料の金額が高額化しており、歯止めがなくなっているので、何らかの基準を示す必要があります。例えば、不動産売買の手数料の上限が売買代金の3%になっているのを参考にして、消費者の1年間のガス料金の3%の世帯数分を上限とすることが考えられます。紹介料について、通達(ガイドライン)で、何からの定量的基準に近いものを示すことが、紹介料に歯止めをかけ、公正競争の実現にもなると考えます。

3. その他

 以上に述べたことのほかに、次のような事も考えています。

  1. 賃貸物件の消費設備の例外的負担(15の9ただし書き)の範囲について、行政はガスの消費に不可欠な警報器などに限定する解釈をとっていますが、警報器代はそもそも基本料金に含まれていると言えますし、消費設備の定義(液石法2条(5)、施行令3条別表1)によれば、給湯器等の燃焼器も、個別合意があれば消費者に負担をさせることが可能となります。この点について、整合性のある解釈論を示す必要があります。
  2. 戸建物件に対する過大な営業行為の制限の規律(15の4、6)は、一般消費者等を対象としています。一般消費者等とは、ガスの消費者を言うので(液石法2条⑵、施行令2条)、建物所有者は規律の対象外となります。ガイドライン(2024・7・2)も、戸建住宅の利益供与の相手を「戸建住宅の消費者」としています。(4頁(3)ア)
     これに対して、戸建物件切替後のガス会社が同じ金額で再度設備貸与契約を結ぶ行為は、新たな過大な営業行為に該当するという見解があります。これが、減価償却分を考慮すべきであるというのであれば分かりますが、建物所有者との設備貸与契約自体が違反行為であるというのであれば、改正省令の解釈論としては適当ではないと考えます。
  3. 切替制限禁止条項違反(15の5、6)として過大な精算金の約定が挙げられていますが、「過大」の判断基準が明らかではありません。ガス事業者の変更時における既存設備の精算の正価格の計算方法として、減価償却資産の残存価格の計算方法が例示されており(通達13条関係4号、16条関係5号)、多くのガス事業者がそれを採用しているのは周知の事実です。この規定は存続していますから、改正省令の施行後もこの計算方法もしくはそれに類する適正な価格の計算方法であれば、精算金の条項自体は、有効であると考えます。これが、過大か否かの判断基準になるのではないかと考えます。

同業者を見るより顧客を見よう ― 中田講師

同業者を見るより顧客を見よう  東洋計器の中田英穂常務取締役は講演で、全国の事業者における設備料金対応が大きく二分していることを明らかにした。また、約40万件のビッグデータ分析により、メーターとLPWA設置されているにも関わらず年間ガス使用量がゼロの世帯が8.4%にも上ると判明したと報告。
 設備料金への対応は大きく二つに大別される。最も多いのは基本料金2500円を2300円と設備料金200円に分割する「基本料金分割型」。一方で設備料金を0円とする事業者も多く、「アパートで複数料金の存在を避けたい」との理由から地場大手の動向に追随するケースが目立つ。いずれも明確な算定根拠を持たない事業者がほとんどだという。 また、同社が実施した400万件のユーザーから統計的手法で約40万件のガス使用量ビッグデータ分析結果については、家庭用39万8785件のうち、年間使用量が0立方メートルの世帯が3万3314件(8.4%)存在することが判明。メーターやLPWAは設置されているものの、全くガスを使用していない実態が明らかになったとしている。
 使用世帯の内訳では、コンロのみが48.5%(月平均2.73立方メートル)、給湯世帯が39.6%(同8.95立方メートル)、暖房世帯が11.9%(同17立方メートル)。売上貢献度では、5立方メートル未満世帯が50.8%を占める一方、20立方メートル以上世帯は5%だが、売上貢献指数は5.5倍に達している。さらに厨房需要の実態も深刻。電気ポットと電子レンジ中心の生活パターンは、IHクッキングヒーターとの価格競争において、年間3万円の差でIHが有利だという。
 こうした課題に対し、中田講師はLPWA活用による新サービス戦略を提言した。高齢者向け安否見守りサービスや、ボンベ残量の可視化により「安心ストックサービス」として適正在庫管理を顧客価値に転換できる可能性を示した。
 さらに「選べる料金メニュー」の導入を強く推奨。「同業者を見るより顧客を見ることが重要。他社の土俵に上がらず、安全・安心・環境という自らの土俵で戦うべき」と呼びかけた。

脱・役所依存、自主対応で臨むべき ― 角田講師

同業者を見るより顧客を見よう  エネルギー事業コンサルタントの角田憲司氏は、「規制当局に明確な指導を期待することはもはや難しい」と述べ、事業者の自立的な対応を強く求めた。
 角田氏は冒頭、「2年間見てきた結果、規制当局や流通ワーキンググループ(WG)では実務的な問題をジャッジできていない」と発言。施行後初の流通WGで規制当局の限界が露呈したとの認識を示した。
 6月のWGで公表された施行状況調査について詳細分析を披露。調査対象の約370事業者(比較的大規模事業者中心)のうち約2割がシステム改修未対応で、対応済み事業者でも約7割が設備料金を「0円」「該当なし」と表示していることを問題視した。
 「対応済み8割×設備料金0円表示7割=56%という驚くべき数字。大手中心でこの状況なら、全国ベースでは更に深刻」と指摘し、中小事業者の実態への懸念を表明した。
 制度改正の本来の目的について、「これまでの商慣行の廃止、つまり異物混入の禁止が最重要。三部料金制の徹底は既に入り込んだ異物の見える化で、新たな異物混入防止こそ優先すべき」と強調。業界の議論が手段と目的を取り違えていると警告した。
 設備料金0円表示問題では、「規制当局は『上乗せしていないことを証明せよ』と警告するだけで、具体的な改善指導はしなかった。答えがないまま事業者に丸投げしている」と批判。
 事業者の説明責任については、「客観的根拠で上乗せしていないと説明するのは困難。現実的には一般負担、つまり全体の消費者に広く浅く負担を分散させる形で他の消費者に転嫁していることを説明するしかない」との見解を示した。ただし副作用として、無償貸与継続の抜け道になる恐れがあるため、「設備無償対応との縁切り宣言」が必要と提案した。
 また「大手事業者は既に規制当局の能力を見切っており、自分たちのロジックで動いている。中小事業者も『お上が決めてもらいたい』という意識を捨て、制度対応リテラシーを高めることが自社防衛になる」とも述べている。
 その上で最後に、「脱・役所依存、自主対応で今後の商慣行是正に臨むべき」と提起し、業界の意識改革を強く促した。
 なお、角田講師はこの講演で伝えきれなかった点については、タスクフォース21ホームページとYouTubeで公開するビデオブログで補足するとも述べた(公開中>>)。

第169回特別例会 登壇者の講演要旨

 2025年7月25日、東京・千代田区の鉄鋼ビルディング南館で開いた第169回特別例会「業界新秩序の構築へ~改正省令本格施行後の問題点と今後の課題」でのパネラー5名の冒頭プレゼンテーション(講演)のポイントは以下の通りです。
 詳細は後日、掲載します。
 各登壇者の資料はダウンロードしてください。

中川順一氏(タスクフォース21事務局長)

  • 行政頼りでない事業姿勢を提唱
    改正省令施行を機に、業界の自立的対応が必要だと強調しました。「行政が判断するのを待つ意味はない。自分たちで学び、どう動くかを考えるべきです」と述べました。
  • 新事業創出とインフラ活用
    LPガス事業者の顧客接点・インフラ・ノウハウといった強みを生かし、多角化による新収益源の確保を提案しました。顧客減少下でも24時間体制維持が求められる現実を踏まえ、固定費負担に耐えるための新ビジネス創出が必要だと訴えました。
  • 改正省令への懸念と行政への働きかけ
    過大営業行為や設備料金基準の不明確さを問題視し、行政に対して基準の明確化を求めました。一方で、拡大解釈により新ビジネスが阻害されないよう留意すべきだと警鐘を鳴らしました。

境野春彦氏(コネクトエネルギーCEO)

  • 改革の経緯を「序破急三部作」として整理
    2017年のガイドライン発出から、2021年の朝日新聞一面報道を契機に動いた改革の流れを解説しました。無償貸与問題の核心を「不透明な料金負担の炙り出し」と表現しました。
  • 政治的働きかけと業界結束の必要性
    国交省が動かない中、参議院議員への協力要請で改善を実現しました。「小さな個人の働きかけでも国は動いた。皆の力を合わせればもっと変えられる」と呼びかけました。
  • 大手事業者の投資実態と改革の成果
    大手2社の投資額を試算し、廃止に積極的な背景を分析しました。不適切事業者の摘発や業界批判記事により商習慣是正が進んでいると評価しました。
  • 成功事例と今後の方向性
    無償貸与廃止で社員が胸を張れる会社に変わった事例を紹介しました。「消費者に信頼される唯一の道は法令遵守です」と強調しました。

松山正一氏(松山・野尻法律事務所 弁護士)

  • 無償貸与を違反とする解釈に疑問
    改正省令の趣旨には賛同するが、無償貸与を「過大利益供与」とする解釈には法的根拠が薄いと述べました。
  • 商慣行是正と省令規制の境界
    ガス会社とオーナーの設備契約とガス会社と入居者のガス供給契約は独立した契約であり、ガス供給契約の内容を設備契約の評価に持ち込むのは無理があると解説しました。
  • 契約承継に対する規制の考え方
    オーナーチェンジやガス会社変更時も、説明と承諾があれば契約上の地位承継として有効です。行政は「新契約」とみなしますが、民法上は契約内容に変更がなければ新契約ではなく、既存契約の継続とみることができると説明しました。加えて、戸建て物件の建物所有者は条文上規制対象外であることを明示しました。
  • 三部料金制による新たなリスク
    料金内容の開示義務により、消費者クレームや返金請求リスクが増大していると指摘しました。
  • 紹介料の目安提示と行政への要望
    不動産業界の手数料基準を参考に、年間ガス料金の3%を紹介料の目安とする案を提示しました。行政には数値や事例での明確な基準策定を求めました。

中田英穂氏(東洋計器 常務取締役)

  • 設備料金対応の二分化とデータ分析
    基本料金分割型と設備0円型の二つの料金方式が存在する実態を紹介しました。40万件のビッグデータ分析で「年間使用量ゼロ世帯が8.4%」と判明しました。
  • 使用実態と課題
    コンロのみ世帯48.5%、給湯39.6%、暖房11.9%の割合となり、IHクッキングヒーターとの価格競争では年間3万円の差がありLPガスが不利になる状況を指摘しました。
  • 新サービス戦略の提言
    LPWAを活用した高齢者見守りやボンベ残量可視化サービスを提案しました。時間帯別データを生かした「選べる料金メニュー」によって差別化を図るべきとしました。
  • 環境優位性の訴求
    LPガスのCO₂排出量が東京電力の半分以下であることを強調し、環境価値を積極的にPRすべきだとしました。

角田憲司氏(エネルギー事業コンサルタント)

  • 規制当局の限界を指摘し自立促す
    「WGや規制当局は実務をジャッジできない」と発言しました。施行状況調査では、大手事業者の設備料金0円表示が7割に達し、全国的にはさらに深刻だと警鐘を鳴らしました。
  • 制度改正の本来目的を再確認
    「三部料金制は異物の見える化に過ぎず、本来は異物混入防止が目的です」と強調しました。議論が目的と手段を取り違えていると指摘しました。
  • 設備料金0円問題と説明責任
    「上乗せしていない証明」は困難で、一般負担への転嫁説明しか現実的ではないと述べました。そのうえで、無償貸与との縁切り宣言が必要と提案しました。
  • WG構成の問題と業界意識改革
    WG委員の知見不足や大手事業者の自己都合発言を批判し、中小事業者にも「お上頼み」を捨てた自立対応を促しました。

意見交換会 発言要旨

過大な営業行為と自主適合宣言の課題
正直者がバカを見ないために

指導や立ち入り経験の情報共有が必要 ― 中川講師
  • 無償配管・給湯器無償提供を条件とする営業が続き、顧客を獲得している事例を紹介
  • 無償対応の過大性判断基準を行政に求め、全国統一の指導を実施すべきと提案
  • 指導や立ち入り経験は業界団体も含めて共有が必要と強調
適正営業で新規契約激減の実態 ― 会場参加者
  • 適正営業を行った結果、新規契約がほぼゼロになった事例を報告
  • 違反行為を続ける事業者が新規獲得を進める一方、遵守事業者は市場から排除される状況
無償貸与や営業行為の範囲を考える ― 松山講師
  • 無償対応は正常な商慣習で過大な利益供与には当たらないとの見解
  • 明確な法解釈基準の確定が必要と指摘
  • ボンベ置き場使用料は正当な商取引だが、高額すぎる場合は過大な利益供与になると説明
協会のリーダーシップが結果に出る ― 境野講師
  • 自主適合宣言企業が標的にされる現状は改正省令の趣旨を損なうと指摘
  • 宣言率の地域格差はリーダーシップの有無が要因と分析
「契約書を見る」と熱心な行政官も ― 会場参加者
  • 行政担当者が自主取り組み宣言に反する業者調査に前向きな対応例を紹介
通報制度は「空き家のポスト」状態 ― 角田講師
  • 通報制度が整理されず機能不全、「空き家のポスト」状態と批判
  • 通報内容の分類・精査と迅速対応の仕組みづくりを提案
大手企業の無償貸与停止は重い ― 中田講師
  • 大手企業が設備無償提供を停止した事例を評価

法的解釈と消費者契約法
自主適合宣言の流れを維持すべき

理論武装した大手企業の動向注視 ― 中川講師
  • 異業種では同様のサービスが行われており、理論武装して違法でないと主張する事業者出現の懸念
  • 行政に明確な見解を求め続ける必要性を強調
理消費者契約法の説明義務を詳述 ― 松山講師
  • 消費者契約法第3条に基づく説明義務を詳述
  • 設備料金負担の理由を含め詳細説明が必要とし、契約書に記録を残す方法を提案
  • 既存契約は不徹底で無効と争われる可能性を指摘
消費者保護最優先に対する対応を ― 境野講師
  • 消費者契約法は消費者保護が優先で、契約書の小さな記載だけでは無効となる可能性を指摘
  • 説明録音の是非など現実的な課題も提示
戸建て契約の説明方法に言及 ― 角田講師
  • 戸建て住宅契約における設備料金説明の必要性を指摘
  • 従来の貸付配管制度とは異なる3部料金制で懇切丁寧な説明が必要と述べた

3部料金制と設備区分
統一基準なき現場の混乱

消費設備が警報器のみとは考えにくい ― 松山講師
  • 消費設備の範囲は警報器に限らず給湯器にも拡大できると主張
  • 賃貸物件で消費設備禁止の相場観にも疑問
警報器をどこに入れるべか ― 角田講師
  • 警報器費用の料金区分が曖昧で、基本料金か設備料金かの統一基準が必要
  • レンタル機器の料金区分も業界内で整理が必要と指摘
警報器は基本料金と言い切れるはず ― 境野講師
  • 警報器は基本料金に含めるべきと明言
根本問題は基本料金の定義がないこと ― 中田講師
  • 基本料金の定義がなく、業界内の統一基準策定が必要
  • 都市ガスとの料金構成の違いや行政の考え方も紹介

契約承継問題と行政対応の課題
解決に向け明確化すべき課題は山積

「包括承継まで新規扱い」に疑問 ― 松山講師
  • 契約承継には特定承継と包括承継があり、包括承継まで新規契約扱いする行政解釈に疑問
相続で突然エアコン買取りも生じかねない ― 角田講師
  • オーナーチェンジ時の既存契約扱いに行政対応のばらつきがあると指摘
  • エアコン貸与が承継時に問題化する事例も想定
地域格差と行政指導のばらつきの解消を ― 境野講師
  • 不適切な行政指導事例を紹介し、理解不足や引き継ぎ不備が原因と分析
議論を継続的し業界・行政に発信する ― 事務局・本紙
  • 各課題を継続的に議論・事例蓄積し、行政・業界へ要望発信を強調
  • 意見交換会の継続開催と紙面での発信を継続すると確認

液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)第11回

 資源エネルギー庁は2025年3月19日、液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)第11回会合を開催し「液石法等との関係で問題となる行為や望ましい行為の考え方、取り締まり等の方針」案を了承しました。この内容は、今後「取引適正化ガイドライン」に反映されます。以下、事務局(資源エネルギー庁燃料流通政策室)の説明内容をまとめました。

   第11回 総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 石油・天然ガス小委員会 液化石油ガス流通ワーキンググループ「開催資料」
   「2025年4月2日例会・意見交換会角田氏資料」     

① これまでの立ち入り検査

  • 改正省令を施行した2024年7月以降、71自治体で約3,000件実施

② 三部料金制(基本料金・従量料金・設備料金)の徹底

  • 設備費用を外出しで表示する三部料金制を徹底する
  • 2024年4月2日以降の新規契約では、設備料金の新設は禁止
  • 既存契約では、設備料金を外出し表示する
  • 無償貸与契約が存在する以上、「基本・従量料金の中に、それらを回収するための金額がまぶされていたはずであり、0円はあり得ない」という前提で説明が求められる
  • 「経営努力による無償化」や「他社より安価」といった説明のみでは消費者から費用を回収していないとは言い切れない
  • 固定資産台帳などの経理書類で、減価償却や経費処理が行われるかどうかを確認していく

③ 三部料金の通知と記載方法

  • 新規契約・既存契約とも、基本料金・従量料金・設備料金の3項目に分けて、料金通知を行うことが必要
  • 従量料金のみの請求でも、基本料金・設備料金の項目を設け、「0円」または「該当なし」とする
  • 請求書備考欄に設備料金を記載するのは不可
  • 「料金設備なし」のハンコでの対応も不可
  • 金額の内訳として、基本・従量・設備料金を表記することが求められる

④ LPガスと関係の費用のない設備の削除禁止【新規契約】

  • 電気エアコン、Wi-Fi機器、インターホンなどの費用はLPガス料金に入れることはできない
  • LPガスの消費関係にない費用をガス料金で回収してはならない

⑤ 賃貸住宅における消費費用設備の禁止【新規契約】

  • 給湯器やエアコンなど、賃貸住宅に設置された設備の費用をLPガス料金に入ることはできない
  • 上記の設備費用は、本来のオーナーが家賃として回収すべきもので、LPガス料金として回収するのは不適当

⑥ 過大な営業行為について

  • LPガス事業者の切り替えを実質的に制限する行為かどうかが評価の基準
  • 特に賃貸集合住宅のオーナー等への利益供与をより厳しく評価
  • オーナーなどに販売した設備の支払い猶予、設備の保証料をLPガス事業者が別名目の利益を供与して相殺、LPガス事業者がLPガス容器置き場代金を支払うなどの行為は、合理的な理由があるかに重点を置いて説明を求める
  • 「通常な商慣習を超えた」利益供与かどうかは、金額ではなく内容で判断
  • ガイドラインでは「他の事業分野の事例」と比較して評価する

⑦ 無償貸与設備の残存簿価格引き継ぎについて

  • 改正省令の施行前に結んだ賃貸集合住宅オーナーとの無償貸与契約は、ほかのLPガス事業者による承継や残存簿価による買い取りについては厳しく対応する
  • 無償貸与された設備を、他のLPガス事業者が買い取る行為は法令違反の可能性があり、原則として「認めない方向」
  • 切り替え時には、無償貸与の精算や適切な対応を指導した事例もある
  • 無償貸与という商慣行自体の見直しが求められているので、過去の無償貸与も、契約更新の機に見直すことが望ましい

⑧ LPガスボンベ賃借料について

  • LPガスボンベの置き場に対して賃借料を支払う行為が問題視されている
  • 「土地代的な適切なら認められるのでは」との意見に対し「合理的な理由があるかどうか」が判断基準(例:レンタル家具屋のソファーが建物に置かれていても、場所代の支払い義務はない)
  • LPガスボンベは建物使用者のために置くので、置き場料金の合理性は疑問(戸建て住宅でボンベ置き場代をとる例はない)

「LPガスのアンケート商法」の注意喚起を

4月の改正省令施行を前に「LPガス料金の調査」などと称し消費者訪問を行う切替業者が、首都圏を中心に現れています。これは典型的な「アンケート商法」で、特商法に違反する悪質な訪問販売です。4月からの改正省令・3部料金制義務化の施行にあたり、料金問題などでお客様に誤った情報が伝わったり、悪質なブローカーの間でお客様情報が交換されることがないよう、チラシ投函等でお客様に注意喚起を行いましょう。
 事務局では、会員の要望により注意喚起チラシのサンプルを作成しました。印刷手配のほか、データ(改変自由)で頒布しています。

改正省令ガイドライン等パブコメの結果公示

 経済産業省資源エネルギー庁は7月2日、「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針(案)」(改正省令ガイドライン)等に対する意見公募の結果公示を行いました。
 「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針(案)」に対する意見公募の結果については提出意見数41件、関連した「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の運用及び解釈の基準について(案)」については、提出意見数5件となっています。

   「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針(案)」に対する意見公募の結果公示
   「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の運用及び解釈の基準について(案)」に対する意見公募の結果公示

商慣行是正の改正省令が公布

 経済産業省は、2024年4月2日、LPガスの商慣行是正に向け、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令を公布しました。改正骨子は(1)過大な営業行為の制限(2)三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)(3)LPガス料金等の情報提供で、(1)と(3)は今年7月2日施行、(2)は2025年4月2日施行です。
 なお、4月5日には、「パブリックコメントに寄せられたご意見と考え方」も公開、4月19日には液化石油ガス流通ワーキンググループの「中間とりまとめ」も発表されています。

《参考》省令改正関連サイト

   省令改正公布(資源エネルギー庁ニュースリリース)
   省令改正新旧対照表     
   改正省令の概要     
   液化石油ガス流通ワーキンググループ
   パブリックコメントに寄せられたご意見と考え方
   LPガス商慣行通報フォーム
   知っておきたい「LPガス」の商慣行

2024年2月特別例会|エネ庁・日置室長の講演内容

夏までに予定のガイドラインは “考え方”の提示

 2024年2月7日に東京都港区の航空会館で開催された本会・タスクフォース21の第161回例会(2月例会)での資源エネルギー庁資源・燃料部燃料流通政策室の日置純子室長の講演内容は以下の通り。

定量的基準提示は独禁法上難しい

 日置室長は、省令改正について「過大な営業行為の制限」「三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)」「LPガス料金などの情報提供」に罰則も含めて盛り込むととともに、通報フォームや関係省庁との連携で実効性を確保していくことを説明。さらに、「LPガス事業者、不動産関係者も含めた業界の自主的な取り組みが推進されていく中で、商慣行改革を進めていきたい」と強調した。

 夏までに策定予定の改正省令ガイドラインは、“考え方”を示す内容になるとし、例えば、過大な営業行為の中身を金額、期間などで定量的に示すことは、独占禁止法の観点から難しいと述べた。現時点における整理としては、そのままガイドライン化しないことを前置きした上で、「LPガス事業者の切り替えを容易とすれば、過大な設備貸与や紹介料など、1回限りの利益供与を行うインセンティブは自ずとなくなる」「継続的な利益供与(例えば LPガスボンベ設置スペースの賃借料、LPガス料金の一部のキックバック、不適当な広告宣伝費など)は、それ自体が契約切り替えの障壁となり得るため、そうした行為は特に望ましくないものとして位置付けることが考えられる。フリーメンテナンス契約も同様と考えられる」「ブローカーや仲介会社に対する成功報酬も、オーナーに対する利益供与と同様に望ましくないものとして位置付けることが考えられる」と例示した。

 ガイドラインの解釈・運用に当たっては、「LPガス事業者が個々の営業行為について、法令に違反しないと自信を持って、しかも対外的に第三者から“それは大丈夫だ”と言ってもらえるかどうか、そういったことを常に問いかけ続けながら業務に当たってほしい」と要請した。

 液石流通WGなどを通じた商慣行改革動向のモニタリングは、「今回の制度改正をやりっぱなしにしないということに尽きる。少なくとも3年間は今何が起こっていて、何が変わっているのかをしっかり見ていく」と述べた。

 戸建ての貸付配管は、今後の新規の契約で行わない方向で取り組んでいくことが期待されるという取り扱いにとどめる。ガイドラインでは、建物所有者と配管所有者を一致させることが、トラブルを防止する望ましい行為として位置付ける考えを明らかにした。貸付配管自体は、液石法で認められていて広く定着している制度であることから、状況を今後モニタリングして、例えば3年後に制度改正の要否も含めて検討していくとした。

機器・設備貸与はガス外ビジネス

 講演後の質疑応答では、会場のLPガス事業者などから実務面の対応を確認する質問がさまざまに出た。

 日置室長は、改正省令施行前の既存契約における無償貸与費用の回収について、改正が過去の契約にさかのぼって適用されないとし、請求内容から設備費用を外出した後も従来の料金水準のまま回収できると説明した。一方、既存契約でも新制度に移行することが望ましいと指摘。新制度への移行に際しては、オーナーや入居者による買い取り、オーナーあるいは入居者とのリース契約などさまざまな契約形態が考えられることを挙げ、「LPガスのビジネスとは実質的に別ビジネスといった形で設備費用を回収すること自体は、通常のビジネスとして正当化される」と強調した。

 全国LPガス協会の「LPガス販売指針」の取り扱いについては、業界の自主ルールとして定められている性質上、エネ庁側から改正の指示などは行わないものの、「今回ルールが変わっていく中で見直すべきところがあるなら、見直していただくことが望ましい」とした。液石法に基づく14条書面は、既存契約について再交付の必要性はないものの、新規契約では、改正省令の中身を反映したものにすることを求めた。

 三部料金制の徹底について、基本料金、従量料金、設備料金の内容基準を設けるか否かを問う質問には、今回の省令改正が、LPガス料金として消費者に請求するのに不適切な設備費用が紛れ込んでいる状況を解消することに焦点があることを説明。「取り締まりの場面では、消費者に見えない形で何か違う費用が入っているという不適切な状況を正していくといった、今回の改正目的に照らして考えるのが、判断基準になる」と答えた。

オーナーとの関係を見直す契機に

 本会は本講演の質疑も踏まえ、賃貸集合住宅での新規・既存契約や賃貸オーナーサービスのあり方について検討、情報交換を重ねていく。また、賃貸オーナーへの設備貸与や提供の当初の大きな目的である、LPガス物件の空室対策支援に立ち返り、オーナーとの関係性やサービスのあり方を考えるべきとも考えている。

 本会は、もともと1997年の液石法改正・省令改正に対応し、新交付書面についての検討を始めたことをスタートとしている。LPガスビジョン検討委員会の取引適正化論議の流れを踏まえて、新液石法に沿う交付書面の作成を行う過程で、顧客との契約を明確化するための「販売契約書」「設備貸与契約書」のひな型を業界に提示するなどしてきた。

 また配管や機器の貸与についても、既存業者が設備投資した顧客を、対価を払わずに切替する業者に対する対抗策として、設備所有権の明確化の必要を訴えてきた。こうした歴史的経緯や過去の議論を踏まえるとともに、現在と今後の状況変化に対応した販売や顧客との関係づくりについての提言を行っていく。

省令改正関連講演アーカイブ

会員限定で、省令改正関連講演を公開しております。視聴をご希望の方は下記より、お申込みください。
非会員の方の視聴は有料となります。

省令改正関連資料(リンク)

省令改正関連の資料を掲載しています。